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ダラダラした交渉は「締め切り」の効果を利用しよう




締め切りによる心理効果は、多くの人が体験しているでしょう。

いい例が、学生時代の試験です。普段はろくに机に向かわない学生でも、明日が試験となれば、あわてて勉強します。遊んでばかりいた大学生でも、今年がんばらなければ卒業できないとわかると、まじめに授業に出はじめるものです。

もちろん、締め切りの効果は、自分に対してのものだけではありません。
うまく使えば、相手の心に枷(かせ)をはめ、こちらの思う方向に誘導することもできます。


たとえば、優柔不断な上司がいて、取引先の言ってくる条件をなかなかOKしようとしません。何度も交渉を続けるうちに、相手もイライラしてきます。こちらとしても、早く交渉を終わらせたい。

そんなとき、上司に「先方の上司が明後日から長期出張に出るので、なんとしても明日決定したいそうです」と伝える。すると、決定を渋っていた上司も、何らかの結論を出さざるをえなくなるでしょう。

逆に、相手側の締め切りを知っていれば、それを利用して相手の意見を誘導することもできます。

この心理テクニックを使った有名な話に、ある日本企業がアメリカの交渉術の大家(たいか)コーエンに対して行なったものです。


コーエンがアメリカ企業の代理として、日本企業と交渉を行なったときの話です。来日したコーエンを出迎えた日本企業の社員は、高級車で彼をホテルへ送り届けた。その際、「帰りも空港まで、お車でお送りします。お帰りは何日の飛行機ですか」と聞いたのです。

コーエンは、何の疑いもなく、帰りの飛行機の予約日を知らせましたが、この「締め切り時間」を教えたことで、交渉術の大家は自分を不利な立場に追い込んでしまったのです。

このとき、コーエンの帰りの飛行機は二週間後だったが、その日から日本企業はコーエンを日本の観光地に案内したり、歓迎会に連れていったりとあちこち引き回したのです。その間、交渉の時間はなしです。

はじめは喜んでいたコーエンも、次第に焦りが生じてきます。二週間以内に決着をつけなければなりませんが、日本企業側はいっこうに交渉をスタートさせる気配を見せません。

ようやく交渉がはじまったのは、コーエンの帰国予定日の二日前。さっそく、コーエンはアメリカ側の主張を話しだしたが、それもつかの間、そのあと入っていた接待のために、交渉は早々に終了してしまったのです。

翌日も交渉が行なわれたが、これもやはり別の接待のため、途中で切り上げられ、本格的な交渉がはじまったのは、帰国するまさにその日であった。帰りの飛行機の時間を気にしながら交渉をするコーエンでしたが、話がまだ決着しないうちに空港に向かう時間となった。

手配された迎えの車がやってきて、コーエンは車中で最後の交渉をするはめになったのです。そんなあわただしい状況では、いかにコーエンでも自分のペースで話を進めることはできません。

結局、その交渉は、日本側に有利な形で終わったわけです。あらかじめコーエンの「締め切り時間」をつかんでおいた、日本側の作戦勝ちといえるでしょう。締め切りの効果は、交渉のプロのペースさえ乱してしまうのです。





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